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アメリカ移住組が、必ずブチあたる壁
私はとっとと退路を断ってしまい、アメリカ人になってしまったため、「老後は日本に戻って生活」という選択肢はありません。しかし在米日本人が必ずブチあたる壁は「このままアメリカで老後を過ごすか」、あるいは「老後は日本に戻るか」という選択で悩むことだなぁ、と最近思うことが多いです。
私は母が日本にいるのですが、その母を一時アメリカに移民してもらったことがあります。父が亡くなって数年後に、弟(つまりは母にとっては息子)が35歳の若さで他界してしまったため、気持ちの落ち込みも激しく、心配になった末、移民手続きをしたのでした。
しかし結論からいうと、年を取った母がアメリカに馴染むのはかなり難しく、かつ認知症を発症してしまったことなども重なって、日本に戻って行きました。アメリカで介護できなかった唯一の理由は「お金」です。医療費が高いのは理解済みだったはずの移民の決断だったのですが、息子を失ってしまった孤独を埋めるために、もっていた財産を使ってしまったのです。私が問いただして判明した時に、所持金は年金のみでした。父や弟の保険金も、家を売った時のお金もすべて空っぽ。それがあるから医療費が高いアメリカにも移民できたのに、です。
老後を過ごすには、贅沢なほどあったお金がない……寂しくて、辛くて、せつなくて。どうにもならない心をお友達との旅行やらお買い物で埋めてしまった……そんな母を責めることはできませんが、「あんなに使ってはダメって言ったでしょう!(怒)」と一時は半狂乱にもなりました。認知症のお薬、1粒の値段が40ドル(のちに話す割引があっても1粒15ドル)。しかも高血圧に悩むようになっており、万が一倒れて入院でもした日には、アメリカの現在の医療システムでは、私たち一家は破産しかねない(困)。自分たちの老後のことはきちんとプランニングしていますが、お金を全部使ってしまった母、しかも病気が発病している母という爆弾を背負って、これから将来がある二人の娘は育てられないし。それでも母を不憫に思う心ももちろんあり、帰国してもらうのは苦渋の決断でした。
ちなみに自分の人生において一番シュールだった1年におよぶ母の帰国劇はもう二度と繰り返したくはないものの、何よりもの救いは、母は住み慣れた日本の方が楽しいと言っていることです。しかも日本に戻ったら認知症の進行が緩やかになってくれて、コロナ出会えないけれどこれで良かったんだな、と今では思うようにもなれました。もちろん今でも遠隔で色々しなければならないことも多く、気持ちは休まりませんが、母がハッピーなので、「ま、いっか」です(笑)
と、前置きが長くなってしまいましたが、そんな経験によって少し早く、アメリカで老後を過ごすことの厳しさなど学ぶことが出来たのは、何かの意味があるのかもしれません。老後アメリカか日本か、、、を悩む皆さんに、今日は少しだけ役にたちそうな情報の共有したいと思います。
親の呼び寄せには移民向け保険を上手に活用
Clubhouseで仲良くなった方が、アメリカでの終活を考える会を開いてくださっています。その会でも少し離したのですが、年老いたご両親をアメリカに呼び寄せる時には、まずは医療保険のことをちゃんとしなくてはいけません。医療保険を海外旅行保険で賄っている人がたまにいますが、これはかなりグレー。知り合いで海外旅行用の保険を延長し続けている最中に怪我をして保険を使った際、移民していることがバレてしまい、とんでもない額を後からペナルティで請求された人もいるので、グレーなことはしない方がよいでしょう。
ご存知のように、アメリカには65歳の高齢者や障害を持つ方向けの連邦政府の保険と、低所得者向けのメディケイドという連邦政府・州政府が共同で提供している医療扶助事業があります。しかしそのいずれも、移民してから5年間は、多くの場合加入ができません(州によって特別処置などがある場合もあり、異なる場合があるようです)。
そこで注目したいのが、すぐに保険に加入できない移民向けの「インバウンド保険」というものです。ウチの母の場合はアメリカに引っ越してきた際、その保険にまずは加入しました。(ただし、これまた住んでいる州によっては保険に加入できないなど条件があるので、調べる必要があります)インバウンド保険は、通常期限が5年で、移民してから24ケ月以内に加入しなければならないケースがほとんどのようです。保険は色々な会社が販売しているので、必要な方は是非調べてみてください。しかしこれは、大きな病気をしたとき用の保険なので、万能ではありません。一定額以内のものには保険が効かなかったりするので、そこも注意が必要です。
我が家の場合はインバウンド保険に加入した次に「ダイレクト・プライマリー・ケア」を提供する病院を探ししました。これって、あまり知られていないのですが、移民でなくても老後をアメリカで過ごしたい方であれば、知っておくと便利な仕組みです。インバウンド保険とダイレクト・プライマリー・ケアの病院の二本立てで、母の場合はアメリカ生活を乗り切りました。
ダイレクト・プライマリー・ケアという、ありがたい仕組み
ダイレクト・プライマリー・ケア(DPC)というのは、分かりやすくいうと「会費制で診てくれるかかりつけの近所のお医者さん」のようなものです。保険を適応させて診察する代わりに、具合が悪くても悪くなくても、毎月会費を払うことで、困ったときには追加料金なしで、いつでも診療してくれるという仕組みです。
母のために私が探した病院の会費は、一か月に90ドルでした。高齢ということもあり、毎月検診をしてくれて、急に発熱した時にも、階段から滑って捻挫をしたときも、手厚く診療してくれました。もちろん母のように認知症になってしまったり、ガンなど大きな病には対応してくれません。しかし、高齢になった際に健康診断の意味を込めて、こまめに通うお医者さんとしては十分だった感じです。
また大きな病院にいくと、待たされた挙句に診察も数分、、、、なんてことも多いと思うのですが、DPCは総じて丁寧に見てくれるのも特徴のようです。母のケースも「血圧を測りにくるだけでも来てくださいね」と言ってくれて、どんなに小さなことでも時間をかけて相談に乗ってくれました。その他、入れ歯を安く直してくれるサービスを教えてくれたり、色々助けて頂きました。
大きな病院に移る必要がある病気になってしまったら、保険がなければやっぱり厳しいでしょう。それでも私は、DPCは選択肢に入れるべきだと思います。特に移民ですぐには保険加入が難しいというような場合、あるいはしょっちゅう風邪をひく、血圧が高いから予防のためにも頻繁に病院に行きたいというような場合は、結果的にDPCの方が医療費がかからないケースもあるので、調べてみるとよいかもしれません。とにかく、くだらん一瞬の診療ですら、場合によっては数百ドルがすぐに吹っ飛んでしまうのがアメリカの医療。人道支援的にサービスを提供しているため、「会費は25ドルだけです」というようなDPCもあるので、お困りの方はそうした病院を探してみてください。
お薬も安く入手できる方法がある事実
また、医療費と同じくらい高額なのが「お薬」。これもDPCのドクターに教えていただいたのですが、お薬を安く手に入れる方法があることも、情報共有したいと思います。色々な団体が同じようなサービスを提供しているのですが、一番有名なのはGoodRxという会社。
なんと、処方箋でいただくお薬のクーポンなどを配布しているんです。モノによっては80%オフ。ウチの母を例に取ると、毎日飲んでいた血圧のお薬は、このクーポンのおかげで毎回価格の30%以下まで値段が下がりました。すべての薬局で使えるわけではないのですが、お薬を貰いに行く前には必ずこちらを確認すると良いと思います。こちらは保険を持っていても使えるシステムですので、知らないと絶対ソン! 是非病院からお薬を頂く際には、ご利用頂くと良いと思います。
老後はアメリカか、日本か。大切な税務の準備
最後に、アメリカに住んでいるなら絶対「一家に1冊」と思う本を紹介したいと思います。手前みそに多少なってしまうのですが、弊社で出版データを作るお手伝いをさせていただいたものです。なので、出版前から内容を拝読できたのですが「ホントに勉強になることばっか!」という感じでした(まさに役得です)。
これは何も「老後のこと」を考えた時に読む本ではなく、アメリカの税制を分かりやすく説明した内容になっています。ただでさえ、税の制度を正しく理解するのは難しい部分があるので、本当に一家に一冊、、、ではあるのですが、当然「老後」にフォーカスをあてると税制度の色々なルールの難しさは、さらにパワーアップします。相続、贈与、出国税、適格年金、永住権の放棄などになると、素人ではお手上げ部分。この本には分かりやすくそうした情報が書かれているんです。
アマゾンの「Unlimited」に入っていれば無料で読めるので、是非参考になさってみてください。書籍は電子バージョンのみ。Unlimied加入がない場合は、9.99ドルで購入が可能です。