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デモ隊が都市部を占拠したシアトルを後にして

ミネアポリスで起きた、ジョージ・フロイドさん死亡事件に端を発し、全国に飛び火した「Black Lives Matter(BLM)」運動。そのデモが激化したシアトルでは、警察解体などを要求する抗議がエスカレートし、デモ隊が市内一部を占拠するという騒動があった。地元の人のが多くとリベラルメディアは、「占拠された場所の本当の姿は、共和党よりのメディアが批判的に伝えているような実態はなく、ストリートフェアのような平和な場所だ」と説明していたが、占拠された場所に住んでいた住民たちの苦情が日を追うごとに増え、最後には16歳の少年が撃たれて亡くなるという悲劇まで起こり、結局7月に入ってから市が介入して閉鎖となった。
この騒動が勃発してすぐの2020年6月半ば、私は7年間暮らしたシアトル近郊から、東海岸のバージニア州へと引っ越しをした。新型コロナウイルスの影響の中、なんと車で7日かけての大陸横断は、かなりシュールな体験となった。いつもの6月ならばシアトルが一番美しい時期で、青空が広がっていてもおかしくないはずなのに、出発の日はどんよりとした曇り空。そんな空の色に影響されてか、かなりブルーな気分でシアトルを出ることになった。シアトルを出発する日には、市内も車で通った。大好きだった街のショーウインドーは、ほとんど閉まったまま。占拠されている場所の近所も通ったが、あちこちに「BLM」の文字が溢れ、パトカーが数台物々しいサイレンを鳴り響かせて走っていたのが印象に残っている。
田舎はやっぱり、トランプ支持が大多数
平和的なデモを続ける人たちに紛れ込んでいる過激派が、何をしでかすか分からない恐怖もあり、引っ越し経路は都市部を避けた。ご存知の方も多いと思うが、アメリカのデモには黒い服を着て意図的に暴れまくる、狂暴な人たちが混じっている。その中心にいるとされる「アンティファ」は、テロ組織認定もされたが、火炎瓶を投げたり、人を殴り飛ばしたり、ブロックをショーウィンドーに投げつけたりと、本当に酷い。
そうしたトンデモナイ輩が暴れる都会は、民主党が根を張っていることが多いこともあり、結果的にアメリカの大半を占める「赤い地域」、つまり共和党基盤の土地を私たち家族はひた走った。大陸横断は数回経験しているが、毎回思うことはアメリカの国土のほとんどが「田舎」ということだ。そしての田舎の現実を、米・大手メディアはとんど拾わない。
2016年の選挙同様、今回の大統領選挙もメディアは民主党優位を伝えている。彼らはひたすらバイデン氏リードを伝え、トランプ大統領は勝てないと言っている。しかし本当だろうか? 少なくともオレゴン、アイダホ、コロラド、カンザス、ミズーリ、イリノイ、インディアナ、ケンタッキー、ウエストバージニアの田舎待ちを走り抜ける中で、そこで目にしたのはトランプ大統領を応援する看板ばかりだった。昼食をとったレストランでは、「Make America Great Again」の赤い帽子をかぶっている人がゴロゴロいたし、車にトランプ支持を表明するステッカーを貼っている人は、本当に多かった。「赤い州では、大手メディアが言っているほどトランプ大統領が窮地に陥っているわけではない」というのが、正直な印象だった。
メディアは同じ間違いをするのではないか?
前回の選挙では、ほとんどのメディアがヒラリー優勢を報道し続け、トランプ大統領が勝った後「まさかの事態」などと口にした。しかし実際周囲の人たちの話を聞いても、共和党州に暮らす友人たちの話を聞いても、トランプ大統領が手ごわい相手であることは、明らかだった。 2017年のトランプ政権誕生の直前、私は「なぜトランプ大統領が勝ったのか?」について考察した本を出版したが、そこでも書いたように、アメリカのメディアはリベラルよりなため、保守派の現状を必ずしも正確には伝えないのだ。前回あれだけヒラリー優勢と言い、痛い間違いをしたはずなのに、今年も田舎の州の現状を、大手メディアが見ているようには、私には思えないのだ。
前回の選挙では「隠れトランプ派が意外と多かった」ということが言われたが、それと同じ現象が起こる可能性は高いと思う。日本のメディアもアメリカの報道を元にすることが多いので、トランプ大統領の支持率低迷を信じて疑わない報道が多いようだが、地方でのトランプ大統領人気は根強い。それを無視すべきではないだろう。
隠れトランプ派……アメリカではそうした人を「サイレント・マジョリティ(ものを語らぬ大多数)」と言ったりするのだが、報道を見ていただけではそうした人たちの動向は読み切れない。今もしも誰かに「今回の選挙はどちらが強いと思いますか?」と聞かれたら、私は迷うことなく「トランプ大統領」と答えるだろう。
<メディアが報道しないトランプ大統領の基礎知識>
Junko Goodyear著
アメリカで感じる静かな「パープル革命」の進行とトランプ大統領誕生の理由