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同じ意味の単語を使用する正反対のグループ

 「プラウド・ボーイズ」は、一般的に極右団体とか白人至上主義者の集まりと言われる団体で、名前の通り「男子だけ」で構成されている。

 まるでコーラス・グループか小劇団のような名称のこの団体が一躍、全米の注目を集めたのが、先月末の米大統領選第1回テレビ討論会だった。トランプ大統領が、バイデン前副大統領から同団体に対するコメントを求められ、「下がって、待機せよ(stand back and stand by)」と、まるで自分のフォロワーに指示するような発言をしたことで、大騒ぎになった。

 その討論会の直後から、「プラウド・ボーイズ、待機中!(Proud Boys Stand By)」とか、「下がって、待機せよ」と書かれたTシャツやグッズがネットで次々に販売されたが、アマゾンドットコム社やペイパル社が、その関連グッズの販売取引を素早く中止。そのこともまたニュースになったが、その素早さには私も驚いた。

 シアトルのような「超」がつくほどリベラルな都市に住んでいると、誇りという意味のプラウド(Proud)やプライド(Pride)という単語には、ゲイ(同性愛)やLGBTQムーブメントのイメージがあるように思う。毎年各地で行われる同性愛者たちのプライド・パレードは、あまりにも有名だ。

 だから、LGBTQの権利活動家である俳優のジョージ・タケイ氏が、「プラウド・ボーイズ」への反意を表明するアイデアを、同じ単語を冠するゲイ・コミュニティーに対してツイッターでつぶやいたときは、「おー、うまいこと言うなあ」と感心してしまった。

 
「ゲイたちがパートナーといちゃついている写真や、いかにもゲイらしい写真を撮って、 #ProudBoysのハッシュタグをつけて投稿してはどうだろう。間違いなくプラウド・ボーイズを混乱させられるはず」

 このタケイ氏の呼びかけに多くのゲイたちが即座に反応。#ProudBoysのハッシュタグをつけて、キスをしている写真やら結婚式の写真やら、様々なゲイカップルらしい写真がコメントと共にガンガン投稿され、それが何万回もリツイートされた。

仲睦まじいゲイカップルの何と多いことか

 このハッシュタグ乗っ取りムーブメントは、「乗っ取り」ではなく、「取り戻す」という言い方で広がり、「憎しみ」ではなく「愛」に溢れるメッセージをツイートしようという呼びかけで、あっという間にそのハッシュタグはアメリカでトレンド入りした。

 アメリカにはこんなに大勢の素敵なゲイカップルがいるんだなあと圧倒されるほど数多くの投稿があった。なかには在米カナダ海軍の公式ツイッター・アカウントも。2016年にカナダ海軍兵士が公の場で同性同士が初めてキスしたという歴史的な1枚を投稿して、4万回近くシェアされ、25万以上の「いいね」がついた。

こちらは、赤ちゃんを抱いたご夫婦の写真。

この火付け役となったタケイ氏もパートナーとの写真を投稿。

「ブラッドと私はプラウド・ボーイズです。結婚して今年で12年になります。私はここに投稿してくれた全てのゲイのみなさんを誇りに思います」

武装した極右団体をからかうユーモアのセンス

 一方、ハッシュタグをゲイカップルたちに乗っ取られてしまった元祖「プラウド・ボーイズ」は、自らを「西洋優越主義者」と呼んでいる団体で、政治デモなどに武装した出立で参加し、過激な行為をすると知られている。2016年に創設され、メンバー全員が白人ではないものの(黒人やヒスパニック系もいる)、反移民を謳っているために白人史上主義のイメージが強く、これまでにフェイスブックやインスタグラム、ツイッター、YouTubeなどが「プラウド・ボーイズ」のアカウントを凍結している。

 前述のトランプ大統領の発言を受けて同団体は勢いづいたが、大統領は後日になって「プラウド・ボーイズを批判する」とコメント。支持なのか、批判なのかよくわからないが、団体側は大統領に支持されていると受け取っているようだ。

 同団体のエンリケ・タリオ会長は、このハッシュタグ乗っ取りキャンペーンについて 「我々を攻撃するものでもないし、侮辱することにもならない。我々は、反同性愛ではないので誰が誰と寝ようと気にしていない」とコメントしている。

 ゲイ・コミュニティーのユーモアのセンスは、「プラウド・ボーイズ」に伝わったのだろうか? もし本当に「プラウド・ボーイズ」は「誰が誰と寝ようと気にしていない」ならば、実は非常におおらかな人たちの集まりなのかもしれない……とも考えてみたが、同会長はゲイたちの写真投稿について「一体、彼らが何をしたいのか全くわからない」とコメント。それはつまり、私には暴力より愛を訴える明確なメッセージにしか見えないゲイカップルたちの投稿の数々が、同会長にとっては「単に男性がキスをしている写真」でしかない、ということなのだろう。

 ともに「プライド=誇り」という単語を拝した男子だけのコミュニティー。でも片方のグループは右側だけを見て、もう片方は左側だけを見て、反対側は振り返らないまま車の行き交う大通りを胸を張って渡っていくような感じ、なのだろうか。

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