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「不正選挙問題」を陰謀論で片づけるべきではない
なんだか、おどろおどろしいタイトルになってしまったが、冗談でこのタイトルをつけたわけではない。アメリカでは今、米大手メディアの報道だけを信じる人たちや、「ようやくトランプが去ってくれる!」と心から安堵している民主党支持者以外の人たち、つまり、アメリカの半分近い(あるいはそれ以上の)人たちは、「ひょっとしたら市民革命は避けられないのではないか?」という不穏な空気を感じているように思う。
トランプ大統領の弁護団は、複数州で不正選挙の訴えを起こしている。凄腕弁護士たちは、ソーシャルメディアを中心に市民を巻き込んで選挙不正を訴える活動をしているが、これがかなり熱い。トランプ派たちを冷ややかに見ているリベラル派にとっては、「証拠もないのに不正選挙を主張するトランプ支持者」は陰謀論者に近いのだろうが、選挙前から続くトランプ支持者の熱心な応援、そして加熱しつつある不正選挙を正そうとする大規模な動きを、単なる「陰謀論者たちの戯言」と扱うべきではないように感じる。
冷静に考えたら、どう見てもおかしな問題があちこちに見られる。しかし、米大手メディアはそういう問題を取り上げないので、保守系ソーシャルメディア「パーラー」などを中心に市民による情報拡散が続いている。たとえば、ネバダ州で提出された不正選挙の証拠は、バインダー20個分にもなったそうだ。総ページ数8000ページの内容だったというが、これらの証拠が「すべて虚偽のウソ」というには、かなり無理がある。新型コロナの影響があったからだとしても、バイデン氏の選挙戦は明らかに盛り上がっていなかったのに、彼の得票数が「カリスマ性では群を抜いていたオバマさんの2012年の選挙より1000万票以上も多かったって、本当?」とか「死人が何百人もあちこちで投票していたのはなぜ?」など、ツッコミどころが満載なのだ。(ちなみにバイデン氏は8000万票獲得したと言っている。これまでのアメリカ史上最高得票数は2012年のオバマさんで約6950万票だった。)
「不正を正し、真のアメリカを取り戻そう」というトランプ支持者の思いは、もはやひとつのムーブメントと言ってよい。例えばトランプ大統領が5日に行ったジョージアの集会は、選挙ラリーをも上回る熱狂ぶりだった。スクリーンには「マジですか?」と目を疑うような不正の証拠たるものが次々に映し出され、その度に観衆はブーイングを飛ばし続けていた。鳴りやむことのない「Fight for Trump!(トランプのために戦う)」コールは、支持者の結束の強さを表していた。
また、それより少し前に行われたジョージア州の弁護団による集会もすごかった。トランプ大統領の弁護士、ジョン・ウッド氏のスピーチに多くの人が熱狂していたが、その様子もまるでドラマを見ているかのようだった。彼は思春期に、実の父が母を殺害する現場を目撃するという悲劇を経験している。すべてを失った彼に残されたのは、ポケットの中の10¢硬貨のみ。地元の弁護士が彼を救ってくれ、そこで彼は正義のために弁護士になることを誓い、弁護士になった。こうした経緯を涙ながらに語る彼に人々もまた涙していた。「何もかも失った自分を救ってくれたこの国のために、私は戦う。アメリカは自由と独立のために。」と彼が語った会場には、止まない拍手と「USA! USA!」の声がこだましていた。
リベラル地域に住んでいない在米者が感じること
次々に出てくる不正選挙の証拠は「取るに足らないもの」とした報道は依然として多い。「トランプ大統領はいい加減、敗北を認めて潔く身を引くべきだ」という声は大きく、日本でもそうした論調があるようだ。もちろん、そう思っている人が多いことは理解できる。トランプ大統領はリベラル派にとっては嫌われ者だ。トランプ大統領が嫌い過ぎて、トランプ以外なら誰でもよかった人は周囲にも大勢いたし、「どうせ政治家はみんな多少の汚れはあるから、ジョー・バイデンに悪い噂があっても、トランプよりはマシだ!」と言っていた友人も多かった。
私はリベラル州を代表するようなワシントン州シアトルから、中道州と言われるバージニア州に引っ越してきて、まだ半年も経っていない。友人の大半はシアトル近郊にいるため、当然バイデン氏に投票した人たちが多かった。そして彼らの反応は、ほとんど上記のような感じだったと言える。
しかし彼らにはたぶん、私が感じている「空気感」は分からないと思う。シアトルで、「選挙結果は、正式にはまだ決まっていないよね?」と指摘したら、「Wake up!(何いってんの?目を覚ましてよ!)」と言われてしまったという友達もいたが、私が声を大にして言いたいのは、中道州では少なくとも「ようやくバイデンに決まって平和になるね!」というような声は皆無、ということだ。
選挙結果は法律にのっとって決まるものだ。だから、まだバイデンさんが大統領になることは「決まっていない」という方が正しい。不正があったとしても、なかったとしても、選挙結果を現時点で「決定」としてしまうことは間違いだし、不正を正そうとする市民の声は、かなり大きく聞こえてくることを、この場を借りて伝えておきたいと思う。
「2021年アメリカ市民革命」は避けられないかも?
とにかくトランプさんを甘くみてはいけない。彼のことを見下し、「不正などなかったのに、ゴネているだけだ」と決めつけて、「これで丸く国が収まる」と考えるのは時期尚早である。むしろ混乱はこれからだろうし、ただでさえ何かある事に暴動がおこるリベラル州の大都市で、今後起こるだろう混乱に備えないのは危険だ。
日本ではほとんど報道されなかった「12月3日の46分にも及ぶトランプ大統領スピーチ」も、それを物語っている。彼はそこで明言したのだ。「これは私が大統領として行う最も重要なスピーチになる可能性がある。大統領としてアメリカの法律と憲法を守ること以上に大きな義務は存在しない」と。
トランプ大統領は、ほとんどの人よりも数倍「上手」だ。そうでなければ、そもそも大統領などになれないし、何度も倒産の危機を経験しながら大きな富と財を築いた実力がある人が、単なる「道化」のはずはないのだ。
彼は自分が勝つため以前に「不正を認めない」ための準備を法的プロセスにのっとって、淡々と整えている感もある。一見すると、いつものマスコミ批判の繰り返しと不正選挙を正すと言っているに過ぎないこのスピーチにおいて、注目すべき点は上記にも述べた「法律と憲法を守る」という言葉だ。その上で2018年に発令した大統領令13848号の言葉をサラリと引用している点も見逃せない。これはアメリカ合衆国内の選挙への外国の干渉が発生した場合に一定の制裁を課す、というもの。選挙干渉が証明されたら、それは国家反逆罪として扱われ、それにかかわる個人や企業(団体)の個人資産凍結などの制裁が課される。すなわち、この問題の行く末は、場合によっては「国家安全保障上の問題」として扱われる可能性があるということだ。
私が市民革命的な内乱は、もはや避けられないのではと懸念する理由はそこにある。現在リベラル地域では、コロナ禍の外出禁止令で疲れ果てているものの、選挙結果に関してはトランプ敗北を前提にした状態で、不気味なほどに「静けさ」を保っているように思う。しかし、それらは恐らく選出証書提出期限の12月8日以降に次々にひっくり返るだろう。
トランプ大統領が逆転すれば、極左による暴動があちこちで起こるのは必須だ。一方で、議員や裁判所、議会が憲法に従わずに不正疑惑があるままバイデン氏が不正選挙を押し切って逃げ切ろうとしても、それは国家安全保障上の問題として扱われる可能性があり、下手をしたら戒厳令発令となるかもしれない。
新型コロナウイルスでクタクタに疲れた2020年。年末くらいは心穏やかに過ごしたいと思っていたが、どうもそうはならないのではないか?と、深くため息が出てしまう。一体どうなることやら……。
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