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「トランプでなければ誰でも良かった」のではない

 2020年はわざわざ言う必要がないほど、めちゃくちゃな年だった。今年は、まったく普通じゃないことが、危険なほど普通に見えてしまう年だった。

 このめちゃくちゃな旅は4年前、富を築いたビジネスマンで、リアリティーTV番組の出演者だったドナルド・トランプが、自身のセレブ力を拡大させ、ずうずうしくも人の弱みにつけこんで2016年の米大統領選で勝利したときに始まった(しかも選挙人団数で勝利したのであって、国民総投票数ではない)。

 4年間にも及ぶトランプの自己陶酔(ナルシシズム)、卑小さ、冷酷さ、甚だしい嘘の数々、そして責任を完全に無視した彼の政権は、米国民の未曾有の危機に対する対応も含め僕の人生の中で存在した数々の政権の中で最低だった。

 そんな訳で2020年の大統領選は、トランプでなければ壊れたトースターにでも投票しそうだったが、僕はトースターではなく、ジョー・バイデンに投票した。トランプでなければ誰でも良かったのではなく、バイデンに投票したのだ。

ジョー・バイデンは人の気持ちが理解できる政治家

 僕がバイデンに投票したのは、彼がアメリカの大統領としての資質をたくさん備えているからだ。彼が持つ切実な同情心、共感力、謙遜、アメリカ人の利益を代表してきた経験値は、これまでの成功と失敗から学び得てきたものである。

 1970年代に妻と娘を自動車事故で失い、2015年には息子を病死しで失ったバイデンは、深い悲しみとはいかなるものかを知っている。彼の人柄を物語る2018年に広く拡散されたビデオ映像には、フロリダ州パークランド高校で起きた銃乱射事件で父親を殺されたティーンエイジャーを、バイデンが人目も憚らず心から慰めている様子が映っている。彼が大統領になったら、このように市民の苦しみや悲しみに共感できる心を持ちながら様々な判断を下してくれることだろう。

 またバイデンは、彼には投票しなかった国民に対しても共感する心を持っている。これは民主党員に共通するテーマで、民主党員はこれに従って行動する傾向が高い。

 労働者や地方に住む市民の暮らしは、ソーシャル・セキュリティー(年金制度)、メディケア(高齢者や障がい者などを対象とした連邦政府による医療保険制度)、メディケイド(州と連邦政府による低所得者を対象にした医療保険制度)、アフォーダブル・アクト(オバマケアー)、労働者の権利と労働環境の保護など、民主党政権によって改善されてきた。これらの民主党的な(もしくは進歩的、革新的な)提案各種によって民主党支持派はもちろん、共和党を支持する大勢の労働者や地方在住者たちも利益を得てきた。いや、共和党支持者たち「も」という言い方は適していない。なぜなら米南部在住の僕の親戚のほとんどは共和党支持者だが、彼らは皆、民主党政権が与えてくれたこれらの各種サービスの恩恵を享受しているからだ。

47年も政治家としてのキャリアを築いてきたバイデン

 バイデンの上院議員としての47年間のキャリアは、彼は政治家としてどう仕事をするべきかを知っているという証拠である。「政治家なんて誰だってなれる」という人もいるが、それは正しいと言えない。政治家にはその仕事を遂行する技術と、その役職の責任の大きさを理解する能力が必要だ。国会での47年のキャリアでバイデンはそれらの技術を培ったといえる。

 また、バイデンは大統領には必須のスキル、「自分とは異なる考えを持つ人たちとも働ける」ことを証明してきた。米議会における彼の親友は、故ジョン・マケイン共和党議員だった。葬儀の際、バイデンがどれほどマケインの素晴らしさを讃え、彼が亡くなったことを悲しんでいたか、あの葬儀の映像を見て心を動かされない人がいたならば、その人は薄情としかいいようがないだろう。僕は、自分とは考えが異なる人の意見にも耳を傾けることが出来る人にアメリカの大統領になってもらいたいたいし、バイデンはその役職を受ける条件が揃った人だと思う。

 まだ選挙の結果は正式に確定していないものの、バイデンは自政権の政策やプログラムの計画を開始した。新政権指針のほとんどは大統領選挙下の討論会で明らかにされてきたが、最近までトランプ現政権が新政権への受け渡しを拒んだことで新政権の計画を具体的に進めることができなかった。が、ようやく新政権の指針が明確化されはじめた(一応書いておくが、2016年にヒラリー・クリントンがトランプに破れたとき、ヒラリーはトランプに敗北宣言の電話を投票日当日に行い、当時のオバマ大統領はトランプへの政権受け渡しの準備をその日の午後に行い、民主党とその支持者たちはトランプ当選に伴う訴訟はひとつも起こさなかった)。

 バイデン次期大統領政権のゴールは、アメリカを「これまでの普通の生活」に戻すことだと思う。まず、バイデンはアメリカをパリ協定に戻し、国民で年収が400,000ドル(約4200万円)以上の人だけに増税を課し、オバマケアーの継続を公言している。そして、トランプ現大統領が敵対視してきた国々との関係、およびトランプが甘やかしてきた独裁者たちとの関係の見直しを公言している。

 トランプとバイデンの最も異なる重要点は、トランプと異なり、バイデンはこのパンデミック危機の解決策を専門家に委ねた点である。

バイデンは社会主義者ではないけれど、共和党主義者は今後も変わらない

 保守派の中では「もうすぐ市民戦争が起きるか、社会主義がアメリカを支配する」とい言われているらしい。

 僕からすると、そんな話は馬鹿げているとしか言えない。国会記録によるジョー・バイデンを知る人ならば、彼が社会主義者ではないことは明らかであり、警察への出資に反対していないことも明らかだ(共和党支持者たちが言っていることに相反するが)。

 これから起き得ることを言わせてもらおう。

 白人至上主義者たちは今後、ホワイトハウスを占領することはできない。書類の有無に関わらず今後、移民たちは人間として扱われる。感染専門家たちはホワイトハウスの援護のもとに市民の健康を保持するための正しいガイダンスを発表する。政権は同盟国に親切でいつつ敵に対しては戦う姿勢を見せる。共和党支持者たちは自分に投票してくれた労働者たちを守る法律に反対することを続けて、そのいくつかは彼らの思い通りになる。民主党政権を反対し続ける人々の生活は少しベターになるだろうが、それでも彼らは共和党に投票し続けることだろう。

 そう、つまり、こうしてアメリカの生活は元に戻るのだ。

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