
ブリアナ・テイラー事件が注目された経緯
私の住むケンタッキー州ルイビルでは、今年3月に起こったブリアナ・テイラー事件の影響で、つい先日まで毎日のように黒人への人権差別に抗議するBLM(Black Lives Matter)プロテスト(抗議デモ)が行われていた。
ブリアナ・テイラー事件とは、ブリアナさんのアパートと、彼女の元彼の違法ドラッグの売人のアパートに麻薬捜査官が同時に家宅捜査に入った際、彼女のアパートにいた当時の彼が、捜査官を強盗と間違えて発砲。それを受け捜査官が応戦した際に彼女の命が奪われてしまったという事件だ。
事件後数カ月は何も騒がれなかったが、5月25日に白人警官に押さえつけられて死亡した黒人のジョージ・フロイドさん事件が全米から注目されたことを受けてぶり返し、BLMムーブメントの一連の事件として注目を集めた。事件が起きたルイビル市には、州外からもプロテスターが集結。ブラック・ミリシアという過激派グループなども、ルイビル市のダウンタウンでプロテストを行うという事態にまで発展した。

プロテスターの攻撃が怖くてBLM支援サインを立てる店や家
ルイビルでの抗議デモ初日、地元住民からなるプロテスターたちは地元の店が集まる人気のストリートに集まり、BLMのスローガンを叫びながら行進するいわゆる“ピースフル”(平和的)なデモを行った。州外からやって来たプロテスターたちはダウンタウンに集まったため、二カ所に分かれて抗議デモが行われたが、ダウンタウンでのプロテストの方は破壊、略奪行為が目立つものだった。
州外から集結したプロテスターによる破壊行為から地元の個人商店を守るために配備された警官たちを、ヒューマン・チェーン(手首を握り合って並ぶ人間の鎖)にて身を呈して守る地元プロテスターたちの姿もメディアに捉えられていた。州外から来たアンティファ(白人のグループ、破壊行為で知られる)から、黒人たちが地元の商店や警官を守っているという、なんとも複雑な光景であった(※ここでは構図がわかりやすいように、あえて白人、黒人と称していることをご理解頂きたい)。
このプロテスト以降、怖がって誰もダウンタウンへ寄り付かず、ビジネスは軒並みクローズ。店側もいつプロテスターから破壊行為を受けるか分からないため、窓ガラスに貼られた防御の板は未も貼られたままだ。
新型コロナウイルス感染拡大の影響で閉めていた店が最近になって徐々に開き始めたが、ほどんどの店の前や窓ガラスには「BLM」と書かれたサインが出ている。もちろん心からBLMムーブメントを支援している店もあるだろうが、店頭にBLM支援サインを出さないと攻撃を受けるかも知れないから予防策としてという店もあるようだ。
BLMサインよりも多いトランプ支持の旗
プロテストが行われている繁華街だけでなく、そこから徒歩圏内の高級住宅街にあるルイビル市長宅の近所の家々も、敷地内にこぞってBLMを支援する看板を立てている。これと同じ光景は、自宅前で何度も抗議集会が開催されたケンタッキー州の司法長官の自宅近辺でも多く見られることから、「プロテスターに攻撃されないための防御策」として立てている可能性が疑える。
そんな光景とは反対に、ルイビル郊外の保守派が多い住宅地などではBLMの看板を目にすることはほとんどなく、今日もトランプ支持の旗が閃いている。たとえば、こんな感じだ。

南部では郊外におけるトランプ支持が根強いように思えるのは、こういう日常の風景を見ているからだ。
今後のアメリカを左右すると言っても過言ではない大統領選挙は、どんな結果になるだろう。国防問題などは友好国である日本への影響も大きい。どうか日本にとってよい方向となる結果がでるよう、遠くルイビルから祈るばかりだ。