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長年親しまれてきたブランドも人種差別?

 2020年5月25日、ミネソタ州ミネアポリスにて、黒人男性のジョージ・フロイドさんが白人警官によって約9分間にわたり首を膝で押さえつけられ死亡した事件に端を発し、全米に広がった「Black Lives Matter(以下、BLM)」運動。もとをひも解くと、2013年、米フロリダ州で黒人の高校生が白人警官に射殺された事件のあと、SNSを中心に広がった抗議運動に遡ることが出来る。

 白人警官による黒人殺害事件は、その後も繰り返し問題視され、そのたびにデモをはじめとする抗議活動が行われてきているが、BLMから飛び火して、長年アメリカの家庭で親しまれてきた2つの食品ブランドが、今姿を消そうとしている。アメリカの一般家庭の朝食には欠かせないパンケーキ、シロップブランド「Aunt Jemima」と、トップ米ブランドの「Uncle Ben」だ。

 日本人の感覚からすると「え?なぜこれが人種差別になってしまうのか?」と思えることがあるかもしれないが、「ブランドのキャラクターは奴隷制度の名残りのステレオタイプな黒人像であり、現代には相応しくない」という理由で、この二つキャラクターは近く「引退」することになってしまった。

かつては、ケロッグの箱も人種問題に

 こうした問題は、アメリカではたびたび起こる。2017年には子供たちに大人気のケロッグのコーンフレークのパッケージに描かれた「コーンたち」が、子供たちに人種差別を植え付けるものだとの指摘を受け、大変なことになったこともある。

 パッケージに描かれた問題のイラストは、下記のTwitterで確認できる。ショッピングモールで楽しそうに遊ぶコーンたちは、どれもトウモロコシの粒に見立てた黄色っぽい色だが、隅で床を掃除する掃除夫に見立てたコーンだけは他のコーンたちよりも、肌の色が濃くなっている。このコーンだけが確かに茶色っぽいのだ。

 このTwitterの投稿者で、このことに気づいたコミックライターのサラディン・アハメドさんは、ケロッグ社をツイッターでタグ付けして「なぜ茶色のトウモロコシの粒だけが清掃員? 子供たちに人種差別を教えているようなもの」と抗議した。ケロッグ社はそれに対してすぐにツイッター上で謝罪。「店舗から商品を回収し、デザインを変更します」と素早い対応を見せたため、アハメドさんも「大変迅速な対応に感謝します」と大人な対応で再びツイートした。

見えにくい人種差別の「境界線」

 一連のツイッター上のやりとりが終了後もネット上では、同社の迅速な対応を褒める声や、こういう小さなことが人種のステレオタイプなイメージを植え付けてしまうという懸念の声などが広がり、ひと騒動が起こった。なかには、この清掃員こそがモールのオーナーかも知れないではないか、というポジティブな声なども飛び交い、この話題でしばらくネットは賑やかだった。

  「人種が持つイメージの決めつけ」というのは、黒人に対してだけでなく起こりうることだ。イスラム教徒、アジア人、ラテン系と、ステレオタイプに当てはめて、人や物事を見てしまうことは誰にでもあるだろう。しかし、ポリティカル・コレクトネスが浸透しているアメリカでは、そうしたことはご法度になりつつある。BLMに限らず、アメリカで販売する商品のパッケージングや広告には、今後ますます全ての人種の心情を汲んだ細心の注意が求めれるようになるだろう。

記事を検証!

ポリティカル・コレクトネス(ポリコレ)を気にしすぎると、怖くて何も言えなくなってしまうことがあります。アメリカ人の中にも「何でもかんでもポリコレ」という風潮をヨシとしない人は大勢いますし、日本出身の私にとっては「気にし過ぎだろう」と思えてしまうポリコレ絡みのことも、多々あります。しかしアメリカに代表される単一人種で構成されていない世界各国では、こうした気遣いはもはや必須の「常識」の範疇に数えられると言ってよい事実は忘れてはいけないと思います。ちなみにポリコレ慣習も地域性があり、どちらかというとリベラル派が多数住む土地の方が、この常識が浸透しているように思います。南部の都市などはかなり大らかで、ニューメキシコに行った際、「ポリコレなんて気にしないよ、言い出したらキリないからね」と言われたことが、とても印象に残っています。

byファーガソンみどり

参考URL:
Black Lives Matter

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