RvB人工中絶

保守派、リベラル派は「人工中絶の権利」をどう見ているか?

アメリカの二大政党の共和党(保守)と民主党(リベラル)。人口で見ると保守派、リベラル派の比率は約半々で、両者のものの考え方は、水と油ほど異なると言われている。保守派共和党の公式カラーである赤、リベラル派民主党のカラーである青を配して、両者の言い分を検証するこの企画。今回は「女性が人工中絶する権利」について。

Redの言い分、Blueの言い分

Blue
人工中絶は合法であるべき。すべて女性は何歳であっても、自分の身体について自分で決める権利を持つべきだ!
Red
人工中絶は不道徳。子宮内で子供を殺害することは、人道から外れた凶悪な行為だ!

Blueが「人工中絶の権利」を支持する理由

 人工中絶は合法であるべきだ。すべて女性は、何歳であっても自分の身体について自分で決める権利を持つべきである。そのためにも人工中絶は手頃な価格(理想的には無料)で、親や保護者の同意がなくとも、すべての女性が利用できる必要があると考える。

 アメリカ市民には、医師と相談の上、どの医療処置を受けるかを決定する権利がある。医学的にその手順が信用できないとか、資格のない者が施術する場合でない限り、政府はそれに干渉する権利を持たない。また、その人が地域社会に対して身体的な脅威を与える可能性がない限り、アメリカ人は政府による処置を強制されることはない

 「胚や胎児には人間としての権利がある」と言う人もいる。私は、「胚や胎児は、人として許容できる定義に適合しない」と言いたい。身体の外で生きることも、話すことも聞くことも見ることもできず、肉体的に完全に形成されていないからだ。もし、それを人と見なしたとしても、自分の身体に起こることを自分で判断できる女性の権利は、胚の権利よりも重要だ。

 アメリカ社会では、いつもこの「女性の権利と胚の権利のどちらの方が重要か」と似たような議論を繰り返している。実際、保守派の多くはしばしば「銃を所有する権利は、銃規制法で社会の安全を確保する権利よりも重要だ」と主張している。

 女性が人工中絶の権利を行使しやすくするには、手頃な価格と利用のしやすさも必要だ。たとえばニューヨークでは、保険がなくても$ 400〜$ 1800で手術が受けられる。これに助成金が出れば、もっと手頃な価格になるだろう。また、すべての医師は外科的中絶や人工的に中絶するための薬(ミフェプリストン、ミソプロストールなど)を処方する資格があるので、これが誰でも利用できるようにすれば、さらに利用がしやすくなるだろう。

 人工中絶の権利を支持する人たちの間でも議論になることが、親の同意なしに権利を行使できる年齢だ。どんな医療処置でも、未成年者に実施する前には保護者の同意が必要なので、人工中絶で同じことを要求するのは理にかなっている。しかし、中絶が必要な未成年者の多くは、家庭内虐待の犠牲者であることが多く、親の同意を求めることを恐れているケースが多いと児童福祉の関係者たちは強く主張している。この場合は、中絶に対する未成年者の権利は、親がそれを知る権利よりも優先されるべきだと私は思う。

 人工中絶をする権利には、その子供を産む権利、それに伴う出生前と新生児の援助を受ける権利なども含まれると考えられるだろう。私たち社会の全員が女性の権利の保護とその重要性の意識を拡げていくべきだ。

Redが「人工中絶の権利」に反対する理由

 人工中絶という話題は、ほぼ必然的にアメリカ人を2つの異なる陣営に分ける女性が妊娠を終了する権利を持っていると信じる人々と、胎児の神聖さを信じている人々だ。双方ともに妥協の余地がほとんどなく、お互いが自分こそ正しいと信じているため、両者間の対話はしばしば論争になる。

 私個人は下記のように考えており、これには大勢の人たちが同意できるだろう。

(1)人工中絶は良いことではない

 中絶は合法であるべきと信じる人でさえ、うつ病、流産の可能性の増加(約1.5%)、女性の生殖器官の身体的瘢痕を含む中絶をした女性への多大な身体的・心理的な影響があることを理解している。

 (2)人工中絶は、妊娠中の母親の命を救うために行われることはない
 この「母親の命を救うため」という神話は人工中絶を合法的に保ち、正当化するために頻繁に使われる。しかし、妊娠による合併症が母親を危険にさらすあらゆる場合において、医療手順は常に「赤ちゃんを取り上げている」。これにより、ときには未熟児が生まれることがあるが、母親の命を救うために中絶手術が行われることはない。

 (3)中絶は不道徳だ
 少なくとも、中絶はセックスをしたことに伴う責任の無謀な放棄である。人は女性と男性がセックスをすると妊娠の可能性があることを認識するべきだ(避妊薬を適切に使用していても)。結果を受け入れられないならば、おそらくセックスをするべきではないだろう。誰もが子供を作る権利を持つべきではないという考え方もあるかもしれない。

 セックスの結果として作り出された子供は、17日後に鼓動が始まり、11週間(3か月未満)であらゆる点で明らかに人間になる。子宮内で子供を殺害することは、状況にかかわらず、人道から外れた凶悪な行為だ。

(4)例外:レイプ被害者にとっては必要
 この問題にはひとつだけ例外がある。レイプ被害に遭われた女性たちのケースだ。中絶の権利を支持する人たちは、レイプの犠牲者が妊娠するため(ごくまれに、3.1%の確率で)合法な人工中絶が必要であると主張することがよくある。アメリカでは、年間およそ1,500〜2,800人の女性がレイプされた結果として妊娠する。犯罪から1週間以内に行われたのであれば、この非常に少数の人たちが中絶手術を許可されても問題ないと私は考える。
 ただし、アメリカ国内で毎年行われる約875,000件もの中絶手術を容認するために、レイプ被害による妊娠のケースを理由にするべきではないはずだ。これほど大規模での胎児の殺害は、私たちが社会として何をしてきたかのという恐ろしい結果である。なぜ、これほど多くの中絶手術が毎年行われているのか? 無関心、便利さ、厳粛な責任の完全な欠如。私は皆がこのことに気づき、胎児を保護しなければならないと考える。

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