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保守派、リベラル派は「# MeToo」をどう見ているのか?
アメリカの二大政党の共和党(保守)と民主党(リベラル)。人口で見ると保守派、リベラル派の比率は約半々で、両者のものの考え方は、水と油ほど異なると言われている。保守派共和党の公式カラーである赤、リベラル派民主党のカラーである青を配して、両者の言い分を検証するこの企画。今回は賛否が分かれる「#MeTooムーブメント」(女性が自分よりも立場や力の強い男性から受ける性的暴行や性的ハラスメントに反対する運動)について。
Redの言い分、Blueの言い分


Blueが#Me, Tooを支持する理由
「#Me, Too!」は、女性が何百年もの間、苦しんできた不当な扱いに光を照らしたムーブメントだ。しかも、その光は男性たちを気づかせるに十分な明るさだった。
このムーブメントは、これまでのアメリカ社会の歩みが、不当な扱いを受けた損傷をなかったことにしたり、問題を根絶できなかったことを明らかにし、それが心地良い話ではなくても常に啓発的な会話を促してきた。
これによって一般的なほとんどの男性は、意図的ではなかったにせよ自分が行っている(または行ったことがある)言動に含まれる性差別を、はるかに認識できるようになった。たとえば以前なら、無害だと思っていた男性から女性への何気ないコメントや冗談が、実は相手だけでなく周囲にいる女性たちまで不快にさせたり、侮辱していると受け取られたり、怖がらせた場合もあると知ったのだ。一部の男性たちにとっては、これは驚くべき情報であり、女性との接し方に関してより一層の思慮深さが必要とされることを気付かされた。
このムーブメントには、もうひとつ肯定的な結果がある。このムーブメントは、被害に遭った女性たちが名乗り出るという行為を応援し、その女性たちや過去に訴えて無視された女性たちの話に耳を傾けるように法執行機関に圧力をかけた。それが功を成した代表的な例は、30年間にもわたってエンターテイメント業界の女性たちに性的暴行を行ってきた常習犯かつ有名プロデューサーのハーヴェイ・ワインスタインの起訴だ。他にもチャーリー・ローズ、マット・ラウアー、ルイスC.Kらが同様の罪で自らの行動の責任を取らねばならなくなった。
なかには、このムーブメントが行き過ぎだと主張する人もいる。そう主張する人たちは、このムーブメントが「性差別的なコメントもレイプも、すべての不適切な行動をひとまとめにして、そういう言動をする男性を全員同様に扱うのはおかしい」と言い、それは「キャンセル・カルチャー(※)」だと訴えている。
私はこのムーブメントの支持者だが、ほとんどの支持者はこの違いを認識し、すべての行動が犯罪であるとは誰一人、示唆していないと反論したい。支持者は、不適切な行動をした男性全員に「何らかのけじめをつけること」を要求しているのだ。罰則の程度によって意見は異なるが、「キャンセル・カルチャー」(実際には常に存在していた)に関しては、誰もが特定の実行者についてどのように感じているかを表現する権利がある。彼らも私と同様にそうする権利を持っているのだから、抗議したいならばすればよい。彼らが誰かの権利を妨害しない限り、私的には何も問題はないのだ。
責任やけじめを要求された男性たちの中で長い間苦しんだ人は、許されるべきだと言う人もいる。私は彼らを許す立場にはいない。許すかどうかは、彼らの犠牲者が決めるべきだろう。誰かがあなたにしたことに対して、第三者の私がその誰かを許すことに意味があるだろうか? 彼らの処罰は、被害者が終えて良いと言うまで終わらせるべきでない。
※キャンセル・カルチャー(cancel culture)とは、著名人の過去の発言や行動、SNSでの投稿を掘り出し、前後の文脈や時代背景を無視して問題視し、糾弾する現象のこと。
Redが#Me, Tooを支持しない理由
原則として、地球上のほとんどすべての人が、職場でのセクハラは許容されるべきではないことに同意するだろう。この社会では、性的暴行やレイプ、殴打などは、あってはいけない行為として真剣に受け止められているだけでなく、国家による刑事訴追の対象となっている犯罪だ。現にこれらの行為に対しては、既に刑法と民法が設置されている。
「Me, Tooムーブメント」の問題点は、女性の福祉にはほとんど関心がなく、明らかに左派の政治的課題を推進することに焦点を合わせている偽善者のグループによって運営されていることだ。最近あったばかりのジョー・バイデン民主党大統領候補に対するタラ・リードさんによる性的暴行の申し立てを見れば、その動きがわかる。
「Me, Tooムーブメント」は、2018年に当時の最高裁判所の判事を決める際、ブレット・カバナウ博士の指名に反対するために、カバナウ博士にレイプされたと訴えたクリスティン・ブレジー・フォード博士の支持に集まった時と同じように精力的に彼女の大義を擁護していただろうか? していなかった。
「Me, Tooムーブメント」創始者タラナ・バーク女史は、前述のフォード博士を支援するために自称の「ラブレター」を書き、非常に感傷的に懸念を表明した。しかし、それがバイデン前大統領を告発したタラ・リードさんの件になると、バーク女子は2020年5月1日に(性的暴行の)生存者には、どのように真実を話し、立ち直るための機会を与えられる権利があるかについて、気乗りのしない平凡な決まり文句で、中立的な声明を発表しただけだった。
素晴らしい。本当に一流だ。フォード博士へは支援するラブレターを書き(その中で、彼女はカバナウ司法候補者を攻撃した)、リードさんへは極平凡な一般的報道声明を書いている。それは、きっとリードさんが左派の民主党員を非難していたからだろう。もしリードさんが保守的な政治家を非難していたとしたら、どうなっていたか想像してみよう。「Me, Tooムーブメント」の創設者は、リードさんの扱いを変えていただろうか?
性的暴行は、社会による深刻な注意が必要な重大な犯罪だ。しかし「Me, Tooムーブメント」は、単純で明解なことに反感を持つ、偽善的で政治的なグループだと私は思う。