Cancel Culture

#CancelNetflixに1日で60万人が署名!

 キャンセル・カルチャー(cancel culture)が台頭するアメリカで、今度はNetflix配信の映画「Cuties(キューティーズ)」が騒ぎになっている。

 今月9日からNetflix配信が開始された「キューティーズ!」は、今年のサンダンス映画祭でワールド・シネマドラマ部門の監督賞に輝いたフランス映画だ。

 11歳の少女が、学校の女子生徒で結成したダンスグループに参加して、ダンスを通して保守的な家族や伝統に逆らっていくという話。常日頃からハリウッドやミュージックビデオでフィーチャーされている人気女性アーティストたちと同様に、性的に挑発する過激な振り付けで踊る子供たちが物議を醸し出している予告編はこちら。過激なダンスシーンだけを抜粋した映像は下記のツイッターで。

 「こんな映画を配信するなんてけしからん!」、「これは子供の性的な搾取」、「子供への虐待だ」などと声をあげた人たちが、#CancelNetflixへの賛同を呼びかけ、たった1日で60万人近くが集まった。翌日にはさらに2万人以上が賛同し、この映画に反対する人たちが次々とNetflixのボイコットに参加している。

 しかし、この映画を作ったマリモウナ・ドゥクレ監督はムスリムの女性だ。「このSNSの時代、少女たちはセクシーに見えている女性ほど成功していると思い、安易にそれを真似ている。それはとても危険なこと」と指摘し、「女性の体の性的対象化も一種の抑圧ではないか」とも話している。だが、#CancelNetflixの支持者は、脚本と演出を手掛けた当の女性監督の制作意図は完全にスルー。「小児愛好者がこれを見たらどう思うか?」というような意見がネット上を飛び交っている。

キャンセル・カルチャーとは、何か?

 キャンセル・カルチャー(英語: cancel culture)とは、ボイコットの形式のひとつだ。この事象は主にソーシャル・メディアの中で扇動され、現実の企業や個人の経営や生活に対して(ときには)壊滅的な影響を与える。Canceledとは抹殺されたという意味である。

 キャンセル・カルチャーを「文化的なボイコット」だと説明する人もいるが、要は狙いを定めた相手を大勢が集まって排斥する、という行動だ。「企業」や「有名人」の「何らかの行い」に対して反対の声をあげ、反対の意思を表明する行動として「その企業の商品を買わない」、「その店には行かない」、「その有名人の出ている番組は見ない」などという明確なゴールを掲げて賛同者を募る。

 この動きは以前からアメリカでは問題視されており、昨年10月にはオバマ前大統領も、キャンセル・カルチャーは建設的ではないと批判。今年7月にはトランプ大統領も、南部連合の指導者たちの彫像を下ろさせる運動に関して、暴徒によるキャンセル・カルチャーだとして非難した。

キャンセル・カルチャーは新しいeSports

 ビデオゲームの戦闘シーンのように、誰かを叩きのめそうとするキャンセル・カルチャーは「デジタル・モブ」(デジタルな暴徒)だと解説する専門家もいる。

  前述の「キューティーズ!」の配信もこれから間違いなく影響を受けるだろうし、今年の例でいえば、アメリカ全土でチェーン展開するDIYの大型店「Home Depot」のキャンセルが記憶に新しい。同社の元共同創業者がトランプ大統領の次の大統領選の資金を援助したことが明らかにされ、一気に#cancelhomedepotが加速。大勢のリベラル派の顧客が来店をボイコットする事態がおきた。

 その少し前には世界展開するハンバーガー・チェーン「ウェンディーズ」も、「Home Depot」同じ理由で、トランプ反対派による#cancelwendysのターゲットとなった。

 キャンセル・カルチャーはほとんどがツイッターの中ではじまり、リツイートを繰り返してバイラル(炎上)し、これほど大勢が反対していることが当事者に伝わってダメージを与えられたら、ゲームオーバーだといわれている。この流行りのゲームオーバーは、いつ来るのだろう。

この記事を検証する!

 アメリカでは昨年から急激に存在感を増した「キャンセル・カルチャー」ですが、以前から「コールアウト」とか、「オンライン・シェイミング」とか呼び名は違えど、同様の動きはありました。とはいっても最近のキャンセル・カルチャーの加速度は、無視できないほどの勢いがあります。なかには、その怒りが何に向かっているのか最早よくわからないような人も見かけます。
 
 この記事は昨年(2020年)に公開したものですが、今週(2021年2月)日本でも重鎮とされてきたオリンピック委員会の前会長の発言をうけて、人々の声がこれまでの流れを変えるという動きがありました。時代は刻々と動いていて、「動きたくない!」としがみついても、そこにとどまれなくなったように思います。
                             by 村山みちよ

 

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