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一軒家に住みたい。でも、ひとり暮らしは不安という人に最適

 一般的に個人主義と言われるアメリカ人は、プライバシーを重視し、高齢になっても一軒家でひとり暮らしを好む傾向が高いと言われている。しかし50歳を過ぎて独身の場合は、必ずしもそうとは言えないようだ。

 一軒家の所有者で同居人を探している人と、賃貸マンションやアパート暮らしに不安を感じている人をマッチングさせるサイトの人気が上がっている。

対象はベイビー・ブーマーたち

 「アメリカン・ドリーム」の象徴といえるような広々とした庭付きの一軒家、ガレージには数台の車というライフスタイルは、住宅ローンや修繕費などの出費が大きく、維持するのはなかなか大変だ。特にコロナ禍で経済事情が変化し、家を売却して賃貸に移行したいと考える人の数も増えている(その反面、大手IT企業などに勤務する経済的に余裕の人は不動産投資に精を出している)。

 そんな中、ハーバード大学の住宅事情研究所によると、アメリカでは「ベイビー・ブーマー」、つまり団塊世代といわれる現在50代半ば〜70代半ばの人たち(アメリカでは1946年〜1964年生まれの人を指す)の多くが、大きな家から小さな家へのダウンサイジング住み替えを含め、家を売却して賃貸にシフトする人が増えているという。

 とはいえ以前として一軒家人気は高く、家族と死別、子供が巣立った後に離婚するなどして、ひとりになっても一軒家に住み続けている50歳以上の人も多い。しかし、その人たちの多くが家の維持費を含めて、ひとりで老後を迎えることに不安を抱えながら生きている。

 一方で、借家でひとり暮らしをするベイビーブーマーも多い。そこに誕生したのが、ベイビーブーマーを対象とした有料ルームメート探しのサイト・ビジネスなのだ。

妙齢の人が他人と共同生活するという、新しい暮らし方

 これらのサイトはどれも会員制で、一軒家の持ち主と、一軒家に間借りをしてゆったりと暮らしたいと考える人をマッチングしている。

 たとえばルームメート・フォー・ブーマーズの場合、メンバーになれるのは50歳以上の女性のみ。入会は無料で、マッチングしたいルームメイトが見つかったときから月会費が$29.99(約3250円)がスタートする。50歳を過ぎてから「生涯の親友」と出会えるかもしれないというコンパニオンシップを得られる可能性を大きな売りにしている。

 団塊世代のハウスメートを年齢括りで対象にしているマッチング・サイト、シルバーネストSilvernestは、一軒家の持ち主は月$24.99(約2700円)だが、入居する家を探している人は1カ月$29.99(約3250円)の月会費を払ってマッチングを探すというシステムだ。徐々に会員も増え、今では年間で約4000組のマッチングをしているという。

 一軒家の一部屋を借りる方が、マンションやアパートの一部屋を借りるよりも相場が安く、使用できる面積も断然広い。スペースを得られて経済的に助かるだけでなく、突然倒れたときには「家に他者がいるから、助けを呼んでもらえる」という安心感が得られるという良いことづくしだ。

 AARPポリシー・インスティチュート のディレクター、ロドニー・ハレル氏によると、「団塊世代は経済的な問題を回避するためだけでなく、他者との繋がりを求めて同居人を探している人が増えている」というので、利便性と節約だけでなく、寂しさも解決できるとしてニーズが上がっているのだろう。

 マッチングが成立後は追加料金を払って犯罪歴などを調査することもできる。このサービスが特に人気が高いというのもアメリカらしいが、個人主義で知られてきたアメリカにおいても「繋がりをもちたい」と思う変化が出はじめたことに特に注目したい。

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若い頃はシェアハウスや学生寮を楽しんだ人でも、「年齢を重ねてからは家族以外の他人と暮らすのは嫌」という人の方がマジョリティー。そんな中で、この新しいマッチング・ビジネスが成長している背景には、リモートワークや壮年以上の独身者の増加など複数の大きな要因が重なっただけでなく、コロナ禍で収入減になり、これまでの生活を変えらざるをえない一定層もいるからでしょう。このような「お互いの不安を支え合う(補う)ことでビジネスが成立するサービス」は、アフターコロナに需要が増えるビジネスモデルだと思います。

by 村山みちよ


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