アメリカで最もよく聞く名前「カレン」

アメリカで今、最もよく聞く女性の名前「カレン」

 1960年代のアメリカでは、人気の女の子の名前の第3位だった「Karen(カレン)」。その後、人気順位は残念ながら大幅に下がったが、今でも一般的な名前のひとつである。

 しかし、今のアメリカでは、「この名前自体」が人格を持って一人歩きしている。「カレン」とは誰なのか?

 アメリカ人が特定の人を指さずに、「カレン」という名を口にすることは今までもあった。日本で言うなら「佐藤太郎」とか「山田花子」的に。そんな時の「カレン」とは、“でしゃばりな中年女性で、ブロンドの髪はレイヤーが入ったボブ。おせっかいで、何かちょっとした文句があると、すぐ「責任者を呼んでちょうだい」と言う白人女性。” だった。 

 しかし今、この名前が特定の個人を指さずに使われるときの「カレン」はこんな女性だ。

 “コロナ禍にレストランやショップにマスクを付けずに現れる白人女性。激しい憎しみや恨み節を吐き、有色人種の誰かのことを権力者に告げ口する。”

 つまり「カレン」とは、人種差別主義と白人至上主義の女性を例えるときに使われる現代の代名詞なのである。

「カレン」の変化形が多用されるように

 前述のような行為をする白人女性を説明する際、「あ、カレンだ」と、そのまま使われることもあれば、形容詞をつけた使い方をすることもある。

 たとえば、マスク着用が定められた大手スーパーマーケット「クロッガー」で、「マスクを着けてください」と注意された中年の白人女性が、注意した相手に唾を吐きつけた事件があったが、その女性は「クロッガー・カレン」と呼ばれた(実際、このような事件は全米各地で多発)。

 また少し前には、ニューヨークのセントラル・パークで、犬をリードなしで歩かせていた白人女性が、バードウォッチングをしていた黒人男性に注意されたことに腹を立て、「黒人男性に脅されている」と警察に通報した事件があった。その一部始終をこの黒人男性が携帯電話で録画して映像を拡散。SNSで大炎上したので日本でもご存知の方もいるだろう。この事件でも、女性の本名よりも、「セントラルパーク・カレン」という名称が世間に広まった。

「ナンシー」、「パティ」、「ベッキー」も被害にあってきた

 れまでも、嫌な例えに使われてしまった女性の名前はいくつもある。例えばそれはこんな名前だ。


「Negative Nancy(ネガティブ・ナンシー)」
おそろしいほど過度に悲観的な女性

「Permit Patty(パーミット・パティ)」
有色人種の若者や起業家の行動に対して、すぐ警察を呼ぶ太った中年白人女性

「BBQ Becky(バーベキュー・ベッキー)」
人種差別的な言動をする白人女性。ちなみにこの名前は、黒人のグループが公園でバーベキューをしていると警察に通報して世間を騒がせたJennifer Schulte事件をきっかけに使われるようになった。


 これらの名前は、時間の経過と共にあまり聞かれなくなっていくものだ。しかし、SNSのさらなる普及と「Black Lives Matter(BLM)」ムーブメントにより、今の「カレン」の米社会への浸透は、以前のそれと比べてかなり根深い様相を呈している。

 「カレン」という名前が最も人気を博した頃に生まれた女性たちは、現在40代後半以降だ。この名前の人気は2018年には625位にまで下がっている。人種差別のシンボルと化した名前を子供につける親はもはやいないだろうから、人気はますます下がるだろう。

 BLMムーブメントをはじめとする、アメリカの一連の人種差別撲滅運動。しかし、礼節を重んじ、誰にでも親切で、コロナ禍ではどこに行くのにもマスクをきちんと着用する「本名がカレン」の白人中年女性たちにとっては、本当に気の毒な社会現象である。

記事を検証する!

「ほら見て、カレンよ」、「あら、知り合い?」、「まさか」。

コロナ禍になるずっと以前、友人と買い物の最中に、大声で喚き立てているクレーマーを目撃したときの会話です。そういう激しい言動をする白人中年女性のことを「カレン」と呼ぶことを知らなかった私は、友人の知人だと勘違いし、会話が少々噛み合わなかったことがありました(苦笑)。

新たに辞書に掲載された単語「フェイクニュース」や、本来の使い方とは異なる意味を持つ「Me, too」など、社会の変化と共に言葉も変化していく中、「カレン」は現在のアメリカが抱える社会問題をドストライクで捉えた単語だと思います。

By 村山みちよ

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