新型コロナで深まった、サステイナブル農業の重要性への理解

ローカル・フード・ムーブメント

 「サステイナブル」は、今日のアメリカの農業を語る上での、ひとつのキーワード。日本語で「持続可能」と訳されることが多いが、そのまま直訳して「持続可能な農業」と言われても、具体的にそれがどんなことなのか、ピンと来ないかもしれない。

 私たちの生活は、利益追求を優先した経済活動を中心に成り立ってきた。人々は豊かさを求めるあまり、何事においても過剰生産を「よし」としてしまい、そのため農業においても、大量廃棄がセットになり得る大量生産がまかり通ってきた。また、農地を作るために森林を伐採したり 、農地で使用される農薬によって土壌や水質の汚染が引き起こされることもある。大量生産とは地球資源の大量消費でもあるわけだが、大量生産を優先する流れの中で、農業と環境との関係を真剣に考えることは、あまり重要視されてこなかった。

 しかし、2020年は新型コロナウイルスの影響で、そのような消費活動のスタイルに疑問を持つ人も多くなった。大量生産、大量消費は、次第に時代遅れになりつつあるとも感じる。アメリカで浸透しつつあった「サステイナブルな農業」では、そもそも地球環境に配慮し、「必要な分だけを大切に育てる」ことが重要視されていた。こうした考えの重要性が、まさに新型コロナウイルスの混乱下で顕著化したのだ。物資の流通に不安を抱える人たちが家庭菜園を始めるケースが昨今目立っているが、そうした人々の行動はまさに「サステナブルな農業」の成長に、一気に拍車をかけていると言ってよい。環境との調和を実現する社会構造が必要になるという点に注力する人たちは、これからもますます増えるに違いない。

小さな生産者と消費者を正しくつなぐ

 生産地から農作物が自分の自宅に届くまで、「何キロの走行距離が必要か」と考えながら野菜を食べたことがある人は、どのくらいいるだろう? 真のサステイナブルには、こうした細かな流通の仕組みなどにも目を配っていくことが必要だ。そんな中、地産地消を手助けする仕組みを提供するコミュニティー・サイトも登場してきた。「Vender」は、そんなサイトのひとつだ。オンライン上で登録すれば、自宅の周辺の農産物生産者を探すことができたり、自分の庭や畑で生産した野菜を販売することなどが出来るという、とてもシンプルな仕組みになっている。少し前の映像になるが、Venderがテレビで紹介されたことがあったので、映像を紹介しておこう。

農業は、人と人をつなぐ絆

 日本よりも国土の広いアメリカでは、自宅で家庭菜園を作っている人が多い。先述のように、新型コロナウイルスの影響で、今まで家庭菜園を持たなかった人も、小さな菜園を始めるケースは目立っている。

 そうした中、家族だけでは食べきれないほど野菜が収穫できた際なども、このサイトを使えば近所の誰かに分けることができる。家庭菜園がない人でも採れたての新鮮な野菜を近所で気軽に購入できることに加え、「野菜の購入」がきっかけになって、人と人との繋がりを生む点もサイトの魅力のひとつだ。

 ソーシャルメディアやコミュニティー・サイトは多々あるが、「野菜」をコミュニケーションの媒介にしたサイトは、まだ少ない。サイト運営者自らが「Viderはビジネスではなく、ムーブメント」だと語るように、こうした「つながり」があってこそ、社会的な動きのひとつとして、サステイナブルな農業の具現化も自然な形で広がっていくのかも知れない。

記事を検証!

Vinderはちょっと前に知って、自分も何度か使ったことがありました。素晴らしい仕組みだと思います。州によって異なるものの、今回アメリカでは日本よりも長い間「ロックダウン状態」が続きました。社会が完全にオープンになるまで長い時間を要する中で、人と人との繋がりの重要性を考えた人は、多いはずです。一人暮らしのお年寄りや小さな子供を抱えたシングルマザーのところに、近所の人が順番で様子を見に行ったり、買い物や食料を持って行ったりすることなどは、あちこちで見られました。コミュニティが一丸となって、助け合うという流れを感じて救われた人も多いと思いますし、この流れが一過性ではなく社会に根付くとよいなと、個人的には思っています。そういえば、私もロックダウンの中で、友人が自分の家で育てたケールやスイスチャードを分けてもらいましたが、彼女にも「Vinderの存在を共有しなくては」ということを、コメントを下記ながら思い出しましたところです。

by Junko Goodyear

参考URL:
Vinder

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