植物で作った卵

卵じゃない卵って、どんな卵?

 肉と魚は食べないベジタリアンや、肉・魚だけでなく卵や乳製品も食べないヴィーガンの人たちも多いアメリカでは、植物から作った加工食品が数多く販売されている。

 なかでも人気なのが、味も見た目も卵にそっくりで栄養価も卵と同様に高い「Just Egg」だ。この「植物から作った卵」にはもちろん卵は一切入っていないので、卵アレルギーの子供たちを持つ親たちからも支持されている。

豆から作った卵の代用品が世界を救う?

 乳製品を食べないヴィーガン用のマヨネーズやドレッシング、チーズ、バター、アイスクリーム、クッキー生地など驚くほど様々な商品が販売されているアメリカだが、料理や調理に重宝するのが卵の代用品。競合他社が特に多いのは、需要の高さの表れだ。

 緑豆から作られている「Just Egg」は液状で、ボトル入りだ。2020年5月時点で4000万個の卵と同量の「Just Egg」を販売し、これは養鶏農業よりも使用する水量は98%減、二酸化炭素排出量は93%減、土地の使用面積は畜産業の86%減で、最もサステイナブルなタンパク源だと同社は発表している。

多くの起業家も出資!「植物ベース」は成長産業

 この商品は植物ベースだが栄養価が高く、コレステロールはゼロ。スクランブルエッグやオムレツなどの卵料理だけでなく、調理のツナギとして様々な料理にも活用できる。すでに「割って溶いた状態」と同じ形状なので、さっと使えて便利だ。

 卵だけなく、アメリカでは植物ベースの代替肉も人気が高い。最大手は「ビヨンド・ミート」社で、えんどう豆から作った看板商品の「ビヨンド・バーガー」は、米国内1万5000店余りの食料品店で販売されている。
 
 アメリカでは動物の肉よりも、植物ベースの代替肉の方が高額だ。そこで同社は複数の有名ファストフード・チェーンとのコラボ商品を次々と展開し、代替肉を一般市民に気軽に食べてもらう取り組みなどを続けながら、すでにアジアのハブといえるシンガポールや人口増加問題に悩む中国に進出している。

 「植物ペースの食品」は環境保護に直接的に繋がるとして、億万長者のビル・ゲイツ氏や多くのIT長者たち、俳優のレオナルド・デカプリオなども投資をしている成長産業だ。代替肉だけでなく、「本物の肉の組織を培養して人工肉を作る」という研究開発も各社が凌ぎを削る中、アメリカの食品市場は今後どれほどの速さで変化していくだろうか。

記事を検証する!

「動物に負担を与えたり、動物を殺したくない」けれども、「肉や卵は味わいたい」という、わがままな消費者が多いアメリカでは、Just Eggやビヨンド・ミートが人気なのは分かりやすい事象です。しかも、Just Eggはパッケージが極めてシンプルですし、ミッション・ステートメントの打ち出し方もビデオの撮り方も美しい(笑)。
植物ベース食品を開発販売する企業の価値は、商品の味よりも人々の共感を呼ぶミッション・ステートメントの強さにあるのかもしれません。

by 村山みちよ

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